■ 市民参加の環境基本計画とは 〜 質問と回答 〜

当日の質問と回答

● 総合計画と環境基本計画の関わり、整合性について教えて欲しい。また、他都市では、環境基本計画と環境基本条例の関係はどうなっていますか。

回答

 総合計画は、すべての都道府県や市町村でつくらなければならないと地方自治法に書かれています。それが最上位の計画になっています。総合計画は基本構想という将来像を示すものと、施策を並べた基本構想、基本計画という施策が並びます。さらに、3年単位の実施計画があり、そこに書かれている内容に応じて毎年の予算を編成することになっています。
 環境基本計画は、総合計画よりも下位の計画になります。総合計画には実施する事業の全てが書いてありますが、環境基本計画は広い意味での環境について書いてあります。狭い意味での環境は、経済とコミュニティですが、全部一緒に成立する、全体をよくしていく計画だと考えてください。環境基本計画というのが、今の日進市を含め、多くの都市では総合計画の内容に1本大きな太い線を入れる、そうした計画だと考えてください。
 環境基本条例をつくってから環境基本計画をつくるところが半分、つくっていないところが半分です。環境基本条例は自治体を法的に縛るもので、環境基本計画の位置付けが見えるようになるものです。また、環境基本条例に沿って計画を立て、実行することを確保するためにつくるものです。

● 日進市の数値目標はどうなっていますか。数値目標の設定にあたっては、現状把握の方法など、専門的な技術があるのですか。環境の数値目標は、何を基にして(例えば二酸化炭素排出量など)決めるのでしょうか。

回答

 数値目標にも様々な決め方がありますが、二酸化炭素のように人間の活動全てに関する数値目標は、地球が持続的発展をするためにどうすべきかということから組み立てるべきです。デンマークでは、2030年には二酸化炭素排出量を半分に削減するためのプログラムをつくっています。
 できる、できないという議論をする前に、目標をつくるべきです。熊本市では、1990年レベルに比べ、2010年には二酸化炭素排出量を20%削減するというようなことは、そういう根拠にあります。日進市の目標というのは、地球全体から見て、目標を決めてから社会をどのようにつくっていくかを考えることに縛られます。
 雨水浸透率をどうするか、水循環をどうするかなどは、専門的な検討や調査が必要です。

● パートナーシップ計画と実施方法をもっと具体的に知りたい。地縁の薄い地域では、市民同士がパートナーシップを取るためにどうしたらいいのか。パートナーシップはよく分かったが、生活者の意識を社会全体の意識にするにはどういった方法があるのか。市民、事業者、行政は本当に対等な関係なのか、また、どうしたらそれがわかるのか、対等に見えていているだけか。実施主体の明記に関して、市民や事業者がやることを行政計画で決めても、多くの市民や事業者は実行するのか、何か特別なアイデアがあるのか。
 もう1つ、菜の花プロジェクトに関して、昔成り立っていたパートナーシップが崩れた原因は何か。パートナーシップ計画と実施方法を、もっと具体的に知りたい。

回答

 今の日進市民がパートナーシップを組めるかというと、それはすぐにはできません。ではどうすればいいかというと、学校を巻き込み、子どもたちもまちづくりの主体であるというところからスタートする考え方になります。
 私が一番注目しているのは、小学校単位のコミュニティプランをつくることです。一番重視しているのが、行政内部の仕組みを民間企業やニュージーランド、アメリカ、イギリスの自治体と同じ様にするという動きと、電子自治体のようなITを使うというような動きです。
 福井市の場合は「うらがまちづくり」という事業を、43地区で平成6年から計画を立案しました。事業の推進で地区の活性化、連帯地区の情勢、地区の人材育成という、「21世紀わがまちプラン策定事業」を行いながら、その後もいろんな実施活動をしています。43地区全てにまちづくりの組織をつくり、自ら活動しているのです。
 また、平成12年までの間に総合計画、環境基本計画をつくっています。両計画をつくるときに、自分たちのまちの宝探し結果を全て反映させています。さらに、地区ごとにまちづくり委員会があり、その中に福祉部会や青少年育成、環境部会もあるわけです。名前はそれぞれの学区によって違っても、環境部会だけが全ての学区にあると言ってよいでしょう。学区単位の、顔が見える範囲で子どもたちも巻き込んで活動する。これが一番近道だと思います。それ以外では、インターネットで情報を提供し、学区単位で競うようなことをやらないといけないと思います。

● 市民、事業者、行政が本当に対等な関係であるかは、どうやってわかるのか。

回答

 全てが対等な関係になろうとしても、すぐには無理です。対等な関係が形成でき、お互い合意できた部分から、パートナーシップでプロジェクトを進めていくと考えてください。圧倒的にお金や知恵があったりすると、依存関係や癒着関係になります。そうするとうまくいきません。全てにおいてパートナーシップというのは無理です。合理的なことがパートナーシップの意味ですから、パートナーシップを組んでよいプロジェクトをつくっていきましょう。

● 昔成り立っていたパートナーシップが崩れた、菜の花プロジェクトの原因はなんですか。

回答

 昔は循環型の社会でしたから、土に還らないようなごみはほとんどなかったし、我が家のごみ捨て場や畑に生ごみを捨てればよかったのです。今はこうした社会全体が壊れてきています。
 私が、一番始めに「昔の姿をみんなでウオッチングして確認しましょう。共有しましょう」と言ったのは、「昔の姿の中でよかった部分はなんですか」というのを見て昔をふりかえり、「昔はよかったな」というのをもう1回再生したいからです。
 ですから、社会全体が壊れているので、菜の花プロジェクトだけが壊れたわけではないと思います。

● 先生が関わってこられた中で、日進市と環境が似通っているまちはどこですか。

回答

 私が住んでいる滋賀県の甲西町も、ある程度人口が急増したところで、その点は似通っているところです。また、新・旧住民の軋轢があることも、似通っていると思います。
 失敗例を1つ言いますが、市民プランを立てるため、長岡京市の30周年記念に新住民ばかりが集まり、非常にアクティブでよい提案をしたのですが、どちらかというと旧住民の反発を招きました。その最大の理由は、昔の循環型社会がかつてあったことをよく覚えている旧住民の中から、本当によかったもの、よい部分を引き出すことがとても必要だったことです。逆に、古臭くてそういうところに参加しづらいことも当然あるわけです。そういうところでお互い分かり合える関係をどう築くかというと、伝統的に循環型の光が見える部分を、一緒に共有するところからスタートすると成功すると思います。

境と言っても、集まる人の考え方が違うと思いますが、それをどのようにまとめればよいのか。今は興味を持った人が環境問題へ取り組んでいるけれども、今後重要なのは、興味を持たない人にいかに興味を持ってもらうのかだと思うのですが、それをどのように思っていますか。

回答

 まずは、考え方が違うということを共有しましょう。全部一緒にできると思うから問題なのです。全部一緒にできることはあり得ません。ですから、ちょっとした労力で効果が大きく、みんなが賛同しやすいところからやろう、それがプロジェクトです。マイバック運動、環境家計簿、エコドライブなどは、きっかけづくりのためにはよいかもしれないけれども、本当の循環型のパートナーシップによってこそ成功するものを、1つでも2つでもまず見つけましょう。
 全体的な仕組みを一緒に考えようという人はそんなに多くないはずです。仕組みができてプロジェクトも明確になり、自分の役割も自覚できて、しかもコーディネートする人がいる。あるいは、経営能力、経営資源を扱える人ができた段階というのは楽しいから、多くの人が乗ってきます。それがないときに一気に火をつけるのは無理です。そういう戦略を皆さんが持つと、相当知恵を絞ったよいプロジェクトができます。

● 上記の質問に関係して、10箇条の中の「先導プロジェクト」に関して市民、事業者、行政が協力することによって効果が上がる具体例を、なるべく多く教えてください。

回答

 例えば、大津環境フォーラムで考えているプロジェクトは全部で5つあります。中でも、「地域環境学校づくり」という、学校を1つの拠点にしながら、総合的学習の時間を利用するプロジェクトです。
 土・日曜日に、学区単位で子どもたちが自発的に活動できるものをつくっていく。そういう活動と連動させて、生ごみリサイクルなどを学区単位で一緒にやろうとしています。
 「大津環境マネジメントシステムスタンダード」といったもがありますが、京都市でもやりました。企業が、自分の会社は環境に配慮した商品で、そのための仕組みとしてISO14001という環境規格を認証取得しています。
 ところが、中小企業はその認証取得をし、その規格どおりに会社の環境に関するマネジメントを実施しようとすると、相当なお金や人材がかかります。また、大企業が下請け企業に対して環境に配慮した商品をつくるよう、ISO14001を認証取得させる場合もあります。そうすると中小企業は、ISO14001よりも簡単だけれどもその規格を守れば率先して購入します。また、京都市もその基準で購入するようにしてください、環境に配慮したグリーン購入ができるようにしてくださいといった動きがあります。その動きの中心にいるのは、各社にいる環境担当の方です。特に、自分からリタイアしてOBになった人が社会的に貢献する、環境に活動するから中小企業へ技術指導をしましょうという連係をたくさんつくっています。その連係が大津市にも飛び火し、高槻市にも飛び火するなど、事例はたくさんあります。

● 「時間がない」ということを、どうやったら解決できるのか。

回答

 時間がない人がますます時間がなくなり、最近失業率も上がっているという、社会全体がもっと労働をうまく配分した方がよい状況になってきています。ソフト的に解決するには、労働をワークシェアリングという形で、少し安い給料で、多くの人が働けるようにするのが必要だと思いますが、それを言っていると環境の問題を言っているのかという話にもなりかねません。
 例えば私など、忙しくてもしょうがないのです。子どもたちの発表会など、いろんな形で地域社会と関わっているわけです。そういう子どもたちの発表会も、単に教育や福祉の対象として見ないのです。もし、子どもたちが環境のことについて提案してきたら、受け入れる仕組みをつくらないといけません。
 今までのコミュニティは、村中総出で地域の環境をみんな共有していました。
 コミュニティプランをうまく立てよう、そのためにインターネットをうまく使おうと、実は過去の生活様式からそのエッセンスを私は引き出したのです。
 「結い(ゆい)」という形で農作業を助け合う、屋根のふき替えを助け合うなど、共助の仕組みをどのようにつくるかを考えない限り、時間がないという問題は解決しないと思います。

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