■市民参加の環境基本計画とは(まとめ)

当日の質問と回答


● 春日井市の内容は。

回答
基本的に環境基本計画はどこが一番進んでいるのかというような質問をしても、どことはなかなか言いにくいのですが、私の感覚からするとパートナーシップで進める母体の仕組みができているかどうかという観点からすれば、当然地球温暖化防止対策が1996年(スイスのジュネーブで開かれたCOP2:第2回気候変動枠組条約締約国会議)、京都市が1998年(COP3:第3回気候変動枠組条約締約国会議)にできた2つの年が極めて先進的です。
 関東圏はどちらかというと、計画をつくるのはがんばっても、パートナーシップの仕組みまではできていないという意味で、環境基本計画にある推進体制として遅れている感じがします。総合計画は必ずしもそうではないのです。関東圏にはおもしろいところがいっぱいあると思います。三鷹市や肥後市などはおもしろいかなと思います。八尾市はもちろん非常に特徴的です。
 春日井市の内容はというと、私としてもつぶさにやっているわけでもないので、ある程度動き出してからでないと難しいですね。動き出すというのは、プロジェクトが動き出すことです。プロジェクトが動き出した後は、本当にそれができているかどうかの進行管理をしないといけないということです。

● 昔の共有性の具体例。

回答
「フューチャーサーチ会議」というものがイギリスにありますが、いろんな立場の違う主体の人、当然、市役所の職員もそうだし、事業者や事業者団体、一般の市民なども全部入って、最低8つほどのセクターから各々8人ずつ計64人を募り、2泊3日という単位でワークショップをするのです。
 内容としては、自分のまちの30年前をふりかえることから始まるのです。「あるまちではどうだった」、「ここではどうだった」、「世界ではどうだった」と言いながら、20年前、10年前をふりかえった後、一気に20年先に飛ぶのです。20年先にこうあってほしいなと。そして、10年先のことについて考え、その将来像に近づけるために今立場は違うかもしれないけれども、20年先には思ったようになっているはずだから、将来像を共有したのでしょう。それに対しては何をしたらいいのかなのというふうに考えていくのです。実は今、私はこの手法を開発しています。そのために、地図を書いてもらっているのです。
 日本の場合は、旧住民に書いてもらった地図で「印象的だったよい場所」、「幼いときに体験したもの」について、今の新住民はそうしたものを全然知らないのです。家の周りに移り住んで、近くの公園などよく行く場所を知ってもらい、その場所の違いみたいなものが出てこないだろうかと。一緒にウオッチングする会を設けるときの企画に、昔の思いでを近隣の人に言ってもらい共有できないか、子どもたちも同じ小学校に通っているので、子どもたちの間ではじめから対立が起こらないようなうまいやり方がないのかと考えています。特に古い写真や地図などを集めて、いつでも見られるようにしたらいいかなと思っていますし、私自身、インターネット上で実現しようと思っています。ですから、電子地図を考えたりしているのです。

● 5つの言い訳をおあずけにしたが、どう使うのか。

回答
まず言い訳だということを自分で考えてください。その後言い訳ではなく、制約条件と言い訳は違うと伝えてください。本当に制約条件でしたら、そのことを市民に共有してもらわないといけません。できないことをできるかの様に言う、そのままほっておくのが一番よくないのです。ですから、できないことはできないと言いましょう。そのときは誠実に言わないといけないし、「なるほどそれは制約条件だ」とわかってもらえる様に言わないといけないのです。あまり相手がカッカしているときに言っても無理ですので、言い訳という部分をそぎ落として、制約条件だけを示すようにしましょう。

● 市民参加と集める方法と伝達の仕方は。

回答
京都市ではパートナーシップ組織「京(みやこ)のアジェンダ21フォーラム」をつくりました。しかし、140万人も市民がいますので、ほとんどの人がそのことを知らないのです。能代市の広報にも1度載せたり、議会にも取り上げられたのですが、ほとんどの人が知りませんでした。
 環境学習法人センターがこの4月にオープンするので、ボランティアを募集しますというのを市の広報に載せました。そうすると、定員50人に対して100人以上の人が集まりました。第一期、第二期といろんなボランティアの研修もやっているのですが、その中でも8割の人が知らなかったのです。
 「京(みやこ)のアジェンダ21フォーラム」では、交通実験やエコミュージアムについての活動など、全部で6つの分科会に分かれて活動しています。そうすると、環境ボランティアやろうというときには、すぐにその情報をキャッチする人もいます。
 私が住んでいる滋賀県の甲西町で、大気講習の先生を公募したのです。すると、普通の企業でパソコンがまあまあ使えるような人が出てきたりしました。その人に「ボランティアをやったことありますか」と聞くと、8割の人が「やったことがない」、「活動に参加したことがない」のです。ですから、違う対象に、違うやり方をすれば集まるというのが1つあると思います。
 また、地域全体を巻き込んでいくためには、子どもたちも含めて活動していくのが一番です。子どもたちがホームページをつくって、おもしろい自分たちの調査結果を発表すれば、親は見ますし、おじいちゃんおばあちゃんは必ず見ます。そこをうまく活用すれば、「自分の部署だけではなく、他の部署の活動も一緒にやろうじゃないか」、「他で事業を新しくやるなら、うちのもちょっと載せてくれない」となり、また違った人のつながりができてくると思います。
 私自身も全然違った観点から、シンクタンクと連携しようと思っているのですが、シンクタンクの一番の悩みは、電子自治体の専門家やPFIの専門家など、それぞれの分野での専門家が山のようにいることだそうです。
 しかし、役所側はPFI、IT推進計画、単発的に発注する行政評価方法について聞きたいなど、単発的に発注します。総合計画を総合的に進行管理するために、お金やたくさんの計画を集めて、その進行管理も含めて全て任すというやり方をしないから総合力を発揮できないとよく言っています。だから連携することもできないし、効果も上がっていないし、我々もよい仕事ができないのでなんとかならないかと、相談されます。
 皆さんも、本当はもっと横の連携、派を超えて活動するということをしてください。たぶんこれからは、そうした仕事が主になってくると思います。私自身は役所の発注の仕方も、派を超えた連携による発注の仕方もないのかなと、これから研究したいと思っています。

● 先進市町の活動や計画。

回答
 これにはいろんなスタイルがあります。私が着目しているのは、まだ環境基本計画をつくって間もない福井市です。福井市で着目しているのは、コミュニティプラン(学区別の計画)がしっかりできていることです。これを平成6年からつくっているのです。そしてそのプランを立てたら、プランを実施する事業の平成8年あたりから始めています。
 自分たちで好きにつくってみてくださいという中で、総合計画と環境基本計画を同じ時期につくりました。総合計画と環境基本計画の課題の抽出、環境基本計画の地区別の環境配慮指針をつくるのも、全部地域の人が集まってつくっています。
 コミュニティプランをつくると、まちづくり委員会みたいものができるわけです。43地区全部に環境部会といったものが全ての地区でできるのです。その学区別の環境部会の人や、「もっと個別の自分の跡取りを守りたい」、「自分はリサイクルに取組みたい」など、いわゆる環境への需要や環境団体の人たちなどと同じテーブルについて、市民環境会議をつくり、これからスタートするところです。
 ですから、環境基本計画だけで何かができるという話では当然ありませんので、特にコミュニティに拠点を持って活動することは重要だと思います。京都市でやっていても大津市でやっていても、モデル学校を定めてできないかという、学区単位で活動するのが一番だと思います。
 それから、「e-Japan」とありますが、インターネットでコミュニティをつくることは、実はまだまだ相当難しいのです。成功している例では、インターネットや情報システムが好きな人が集めたものを交換するサイト、それと出会い系などは電子上でコミュニティが成立しているのです。電子上で地域のことを考えるというコミュニティは、今までのところ十二分に成立していません。市役所がつくった電子会議室というものが30ほどありますが、成功しているのは藤沢市だけです。もちろん、運用の段階で東京都が新しい地域活性化のための中小企業振興策などは成功して石原都知事が来たといった話がありますけれども、全体として運用が成功しているのは藤沢市だけです。これは、市役所が運用規定をつくり、管理をする前にいろんな市民を集めた運営委員会に任していたのです。ですがもちろん、こうしたことにトラブルは付き物です。そういうものも運営委員会に任せて、1つずつ解決しています。
 今後変わってくるのは学校です。子どもたちの総合的学習の時間などもそういうところに持ってくれば、これからどう使っていくのかが一番ホットな話になってきます。

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